働き方改革、副業解禁、地方創生、そしてコロナ禍を経た価値観の転換。こうした流れの中で、いま「農業」が新たな副業先として注目を集めています。自然と触れ合いながら心身を整える時間、都市生活では得難い労働の実感──それらに加えて、スマート農業などITとの親和性も追い風となり、多様な職業に就く人々が週末農業やクラウドファーミングに関心を寄せています。
一方で、農業の担い手不足が深刻化する中、副業人材を受け入れる農業経営者にとっても、これは大きなチャンス。この記事では、副業として農業に取り組む人と、受け入れる側の農業者の双方にとって必要な視点を、労務の専門家である土川経営労務事務所が実務的に解説します。

社会保険は「主たる勤務先」が基準
副業にまつわる誤解の一つが、「社会保険の二重加入が必要なのでは?」という点です。原則として、厚生年金や健康保険といった社会保険制度は主たる勤務先での加入が基本であり、副業としての農業がアルバイトレベルの収入・労働時間であれば、追加加入が必要となることはほとんどありません。
個人事業として農業に関与する場合も、国民健康保険・国民年金の枠組みとなるため、会社員としての社会保険への影響は限定的です。
競業避止義務と農業の位置づけ
副業を検討するうえで気になるのが競業避止義務。しかし、農業と多くの業種とは直接的な競合関係にありません。たとえ就業規則に競業禁止条項があったとしても、農業が明示的に対象とされていない限りは、競業に該当するケースはほぼありません。
ただし農産品の販売ビジネスへと発展する場合には、企業側の業務との関係性を考慮し、必要に応じて届出や事前相談を行うことが望ましいといえます。

労働時間の通算は不要?
原則として、労働基準法第38条第1項に置いて、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされています。
ただし、副業先が雇用契約でなく業務委託契約である場合は、労働基準法の適用外となる。また、労働者が労働時間を申告していない場合は、厚生労働省のガイドラインでは、労働者からの申告がない限り、通算義務は生じないとされている。
この辺りは、今後法改正などで取り扱いが変わる可能性があるため、最新の情報を確認してほしい。
副業人材を受け入れる側──農業経営者にとっての新たな可能性
今、注目すべきは「農業副業をする人」だけではありません。農業経営者が副業人材を受け入れるという視点にも、大きな可能性があります。
- 異業種スキルの導入による経営革新 副業人材の中には、IT、マーケティング、会計、デザイン、営業、商品企画といった専門性を持った方が多数います。こうした人材を畑だけでなく、ブランディング・販売強化・業務効率化に活かすことで、農業経営の新たな展開が見込めます。
- 柔軟な関わり方で無理なく協働 毎日常勤する人材ではなく、週末だけのスポット参加やオンラインでの支援など、働き方の多様性が可能。農業の繁忙期に合わせた短期的な関与も現実的です。
- 地域外との接点を持つことで、情報や販路が広がる 都市部と接点のある人材の受け入れは、新たな顧客層や販路、企画の可能性を広げることにもつながります。

副業人材受け入れ時の法務上のポイントと、当事務所の支援
副業人材を受け入れる際には、いくつかの法的確認や整備も必要です。
- 労働者として受け入れる場合は雇用契約と就業条件の明確化
- 業務委託契約とする際の責任範囲と契約書面の作成
- 勤務先企業との競業・秘密保持への配慮
- 労災保険・社会保険の取扱いや就業中の安全管理
土川経営労務事務所では、こうした副業人材の受け入れ支援を通じて、
- 農業法人の副業制度導入や雇用規定の整備
- 契約形態や保険加入状況のアドバイス
- 双方が納得し、持続可能な就労環境を整えるコンサルティング
を提供しています。
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